ケルトの国―アイルランド小噺 《NHK朝ドラ”ばけばけ“:小泉八雲とアイルランド③ 》
現在NHK朝ドラで放映されている“ばけばけ”で小泉八雲をモデルにした主役の名はレフカダ・ヘブン。レフカダ・ヘブン役を演じている俳優が、トミー・バストウ。いまやお茶の間でも知られ始めているトミーだが、“ばけばけ”が始まるまでは、ほとんど日本では無名の役者さんだった。もともとトミーは、イギリスのロックバンド“FRANKO”でリードボーカルをしているプロミュージシャンでもあったが、俳優業も10代の若いころからかかわっている二刀流である。
俳優としては、唯一、日本で知られているとすれば、真田広之が主演、プロデューサーも兼任しエミー賞やゴールデングローブ賞などで数多くの授賞作品となったアメリカのテレビドラマ“SHOGUN”にポルトガル宣教師役で出演して、堪能な日本語で好演していることぐらいかもしれない。
筆者も“SHOGUN”に出ているトミーを見て、日本語の達者な良い役者さんだな、こういう役者が“ばけばけ”の主役になれば良いな、と思っていたら、なんと1767人の応募者によるオーディションの末、本当に主役に抜擢されたと聞いた時は正直腰が抜けるほどびっくりしたことを記憶している。何でも“SHOGUN”で共演していた日本の女優から“ばけばけ”のオーディションがあることを聞き、NHK橋爪プロデューサーに直接コンタクトして、オーディションに応募したらしい。
ちなみにトミーは、“ばけばけ”の次は、米国テレビドラマ“SHOGUN 2”への出演も決まっており、今後日本でも海外でも益々注目される俳優に成長していくことを確信している。
筆者は三回ほどトミーとはお会いしているが、本当にイケメンの人柄の良さを感じる好青年である。
トミーは、アイルランド人と想像する方もいると思うが、実際はイギリス人である。ただ、曾祖父がアイルランド人なので、アイルランド系のイギリス人と言うこともできる。
そういうトミーとアイルランドの関係は、NHKで昨年11月3日に放映された“ばけばけ トミー・バストウが巡るアイルランドとニューオリンズ” という番組でも取り上げられていて、実際に彼が小泉八雲が幼少期を過ごしたアイルランドのダブリンにある叔母の家の八雲の部屋だったところなども訪問している。(ご興味がある方は、NHKOneで1/10までこの番組を見ることができる。)
後程もう少し詳しく触れさせていただく小泉八雲とアイルランドとの深い関係やトミーとアイルランドの関係から、昨年3月15日(日)に東京の代々木公園で開催された“グリーンアイルランドフェスティバル” のメインステージでは、トミー・バストウとNHKの橋爪プロデューサーにも登壇いただいて挨拶・トークをしてもらったり、主演の高石あかりさんのビデオメッセージをいただくことができた。
ちなみに、「グリーンアイルランドフェスティバル」とは、アイルランドの国民的な祭日である”セント・パトリックデー”(3月17日)を日本でも祝って、毎年3月その日に近い週末に2日間代々木公園でアイルランドの音楽・ダンス、その他文化・スポーツ・グルメ他全般を紹介するイベントである。
例年10万人以上の来場者を迎えているアジア最大のアイルランドのショー・ケースとなるイベントで、本年は3月14日(土)-15日(日)2日間また代々木公園で開催される予定だが、今年は、開催し始めてからいよいよ10周年を迎える。筆者は、僭越ながら創設時よりこのイベントの実行委員長を務めてきているが、主催者としてはNHKさん、トミー、高石さんに大変に有難い協力をいただき感謝の言葉しかない。
さて、今回の稿でも、本題の小泉八雲とアイルランドの深い関係について触れずに終わってしまいそうだが、最後に“トミー・バストウ”ネタをもう一つご提供したい。
トミーは“ばけばけ”のヘブン役と違い、かなり堪能な日本語を話すが(“ばけばけ”でのあの片言の変な日本語はさぞ逆に苦労していると思われる。)、日本に来たことも学校で正式に習ったこともない彼がなぜ上手な日本語が話せるようになったか?
聞いたところによると、独学で日本語を学んでいた彼の日本語がうまくなった一因として、テレビドラマ“SHOGUN”のロケでカナダのバンクーバーに来ていた時に、たまたまお笑いコンビ“オアシズ”でかつて大久保佳代子さんとコンビを組んでいた光浦靖子さんが、バンクーバーに語学留学に来ていた時に知り合い、そこでお互いの言葉を教え合う‘語学交換‘をしていたことが影響しているらしい。なんとも面白いご縁である。
Y.T.


