白酒(パイチュウ)奮戦記 - 山東省
白酒と言えば中国を代表する有名な酒で、皆さんもご存じかと思います。中でも最も有名なのが「茅台酒(マオタイ酒)」でしょう。1972年日中国交正常化式典の宴席で、田中角栄首相と周恩来総理が乾杯したことで日本でも広く知られることとなりました。私も中国駐在中に何度も口にしたことがあります。さて、今回はこの白酒にまつわる話です。
山東省の済南(サイナン)に出張した時のことです。地元のパートナーへの表敬で訪れたのですが、先方は「待ってました!」とばかりにその夜は先方の幹部が主催する歓迎会が催されました。山東省で歓迎会と言えば絶対に欠かせないのが白酒です。
豪華な料理を前にいよいよ宴会開始となったそのとき、先方の幹部が「先生、中国では偶数が縁起がいいというのはご存じですか?」と聞くので、「もちろん知っています。」と答えました。すると、すかさず円卓にいた一人が「好事成双(=良いことは二つ同時にくる)だから、二杯連続して飲みましょう。」と言い出しました。「いいですよ。」私は喜んでその申し出を受けました。
出された白酒はアルコール度50°の地場の酒。飲み干した酒が食道を通って胃の中に流れ落ちていくのが自分でもわかります。それが済むと、今度は別の人が、「四大喜事(=人生で四つの嬉しいこと)だから四杯飲みましょう。」と言ってきました。これも受けることに。やれやれと思った矢先、今度はまた別の人が「六六大順(=全てが順調)だから六杯いきましょう。」と言ってきたのです。こっちは私一人、相手は全部違う人。「アンフェアーだろう!」と思ってはみたものの、なすすべなく六杯連続で。ほうほうの体で飲み終えると、「八面玲瓏(=八方美人)だ。八杯いきましょう。これで最後です。」と言って今度は八杯連続で。
結局、空腹のまま連続で20杯の白酒を次々と飲む羽目になりました。夏の夜空に大輪の花を咲かす四尺玉のごとく、私の胃の中で白酒が次々と炸裂し続けたのでした。「先生、実にいい飲みっぷりですね!」と褒めてもらったものの、こっちにしてみれば「冗談じゃないよ。俺を殺す気か!」です。私は心の中で叫んでいました、「とんだサイナンだ!」
当時の中国は飲むことが仕事のような時代でしたが、済南でのこの一件は私の数ある白酒奮戦記の中でも特に記憶に残るものです。
PS 某日系企業の駐在員が白酒で命を落とした事例もあり、白酒は飲み方を誤ると怖い酒であることを申し添えておきます。
【補足】
文中の「四大喜事」は漢詩の五言絶句の中に出てくるもので、以下を指します。
〇久旱逢甘霖(長い干ばつの後の恵みの雨)
〇他郷遇故知(他郷で昔の知人に逢う)
〇洞房花燭夜(新婚初夜)
〇金榜提名時(科挙試験に合格)
Y.S.