武士道とは“BUSHIDO”と見つけたり?
今、混迷の度合いを増々深めている世界情勢ですが、とにかく一日も早く各地の紛争が解決され、
平和が実現されることを世界中の人々が願っていることは間違いないと思います。
ところで、戦前に国際連盟という機構があったという事実は、皆様よくご存知と思います。
第一次世界大戦の惨禍の経験から、国際紛争を回避するための世界的な枠組みを作ろうという理想のもと、
1919年に発足したわけですが、歴史の教科書など紐解いてみますと、やはりその実効性については否定的な見解が多いようです。
確かに、最終的には第二次世界大戦を防ぐことも出来なかったわけですし、
結果だけで判断する限りでは、十分に機能したという評価は難しいかもしれません。
ただ、その中にあっても、実際に国際紛争を回避、解決した事例は、いくつかあったようです。
フィンランドとスウェーデンの間にオーランド諸島という島があります。
1923年、この島の領有権をめぐり、両国の間に緊張が高まりました。
細かい経緯は省略しますが、最終的にこの問題の解決は国際連盟に付託されることとなり、
本件の解決に奔走した当時の事務次長の裁定案が正式に採択され、
この領土問題は紛争に至ること無く、平和裏に解決されたのです。
この問題を担当し、解決に尽力した国際連盟事務次長こそ、新渡戸稲造という一人の日本人でした。
折しも今年は新札発行の年ですが、二代前の五千円札のモデルにもなった新渡戸稲造は、勿論誰もが知っている人物ですので、
その業績についてここで字数を連ねることは差し控えますが、その中で一つ、
個人的には、英語で“BUSHIDO”という本を著したことが、強く印象に残ります。
日本語で説明しろと言われても難しい武士道という、幅広く奥深い価値観を、英語で一冊の本に書き記したということ自体、
日頃から英文に悩まされることの多い筆者としては、もはや超人的な偉業に思えます。
江戸時代に生まれた人間が、日本人の深層に連面と受け継がれている根源的な価値観について外国語で世界に発信し、説明する。
そして国際政治の舞台で堂々とリーダーシップを発揮し、非常に複雑かつ危険に満ちた領土問題に取り組み、
見事に平和的な解決をまとめ上げてしまう。まさに驚くべきことと思います。
この人物の能力と卓見の、せめてその1%でも自分に恵まれていたら、と思わずにはいられません。
と同時に、国際社会における日本人のプレゼンスという面で、大きな足跡を残してくれた先達に対し、
尊敬と感謝の念を忘れないようにしたいと思うものです。
それにしても、後世の教科書には、国際連合はどのように記載されるのでしょう。
歴史の評価を待つのみですが……
M.M.